


「エピステームから最高の美容液を出そう!と考えたとき、ロート製薬の今までの研究を最大限に活かした製品作りをしようと思いました。それは何より効果にこだわることであり、そうすると必然的にハイドロキノンに行き着いたのです」
ハイドロキノンはブライトニング効果があることが知られながら、医師の処方のもとでしか使われてこなかったもの。それが2001年の規制緩和により、市販化粧品でも使われるようになりました。しかしその反面、安定性が問題視され、刺激性が出やすいとされる材料でもありました。

「単純にハイドロキノンを使った商品を出しても、その安全性についてお客様にご心配をおかけするようではいけません。その点はクリニックでの実績が生きました。患者からのクレームもなく、なぜこんなに刺激がないのかとお医者様たちが疑問に感じられているほどでしたから」
もともとロート製薬には、ハイドロキノンの液剤を皮膚科のクリニック専用に販売してきたという実績がありました。こうした製薬会社の強みを最大限活かしたエピステームブランドだからこそ実現した美容液、HQブライトコンセントレイト。しかし、商品化までには長い時間がかかりました。ハイドロキノンを配合する上で、一番の問題点となったのは安定性の確保です。
「安定性が良いとはハイドロキノンを含め、製品の品質を長い間保つことができるということです。逆に安定性が悪い製品は思わぬ肌トラブルを引き起こす場合があります」
ハイドロキノンを配合した製剤は安定化させた状態での保存が難しく、クリニックでも自家製剤という形で冷蔵庫で保存しているといいます。ただし、化粧品となるとそれは難しいので、冷蔵庫でなくても保存できるような安定性が求められました。しかも、クリアしなければならない安定性の関門は、研究室でつくるとき、スケールを大きくして工場で生産するとき、さらにお客様のもとに届くときと、何段階にもわたります。商品化のための課題となったのは、ブライトニング効果と安定化の実現。ロートの研究開発陣の挑戦は、ここから始まりました。


HQブライトコンセントレイトは、美容液には珍しいバーム状。楯は、なぜあえて軟膏を選びバーム状にしたのかを明かしました。
「最も課題であったハイドロキノンの安定性を考えると、なるべく余分なものは入れたくないと思っていました。それで選んだのが今の製品のようなバーム状にすることです。肌への負担をできるだけかけずに安定性と効果を高い次元で両立させたかったので、試行錯誤の上、選んだのがバーム状の美容液なのです」
さらに、バーム状にすると液材にはないメリットもあると楯はつけ加えます。
「薄く伸びてしまう液材に対して、厚みのあるバームならではのメリットです。気になる部分にピンポイントに密着させることができ、しかも美容液が肌に近い方から、時間とともにじわじわと浸透していきます。夜ケアをして、寝ている間に効果が得られるのはこのメカニズムですね。気になる部分に働きかける効果と安全性の両立、それがこのバーム状の美容液なんです」
![]() |
![]() |
|---|---|
| HQブライトコンセントレイトを紙につけた直後。 | 数分たつと、徐々にしみ出してくるのがわかる。 |
しかし、このバーム状美容液が仕上がるまでには、想像を絶する苦労が待っていました。
「寒天やかたくり粉のように、水をジェルのように固める成分を入れても、ハイドロキノンはうまく固まりませんでした。また、固める成分を少しでも入れすぎると糊のようになってしまい、とてもお客様には使ってもらえない。そのジレンマに悩みましたね」
そんなときに出てきたのが、もともと一定の固さのある軟膏と液剤をうまく均一に混ぜ合わせれば、クリームができるのではないかという発想。
![]() |
|---|
| ハイドロキノンを軟膏に混ぜ合わせている。研究開発では、この作業が数え切れないほど繰り返された。 |
「でも、その軟膏は油、ハイドロキノンは水に溶ける。水と油とでは反発しあって単純には混ざりません。普通は乳液などを作るときに使う界面活性剤を使いますが、この場合は使えませんでした。そこで、油と水をつないでくれる成分を探すことに力を傾けました」
つなぎがあればいいのはわかっている、だけどそれが何なのか・・・。
「混ぜ方がまた難しいのです。ひとつ間違ってもうまくいかない。一度はうまく混ざっても、1~2週間たつとまた分離してしまうこともありました。混ぜる時間、混ぜる力の強弱など、いい条件を見つけるのに時間がかかりました。さまざまな研究努力の末に、商品として出す直前の段階まで、本当に出せるのかどうかという判断をしていたので、商品化した時は本当にうれしかったですね」
こうして、HQブライトコンセントレイトは、手間ひまを惜しまない職人の手作りのようなプロセスを経て生まれたのです。

![]() |
|---|
| 空気が容器内に入ってこないバックレスチューブ。 |
商品の安全性へのこだわりは、「バックレスチューブ」という独自のチューブにも表れています。
「これもハイドロキノンの安定性を守るためのものです。ハイドロキノンは水に溶かして窓際に置いて光に当てていると、3~4時間しないうちに透明な液が真っ茶色になってしまいます。ですから、光や酸素は十分に注意しなければなりません。従ってチューブは光を通さないこと、そして空気や一度空気に触れた成分が中に戻らないことが絶対に必要になります」
バックレスチューブは、開口部にある特殊な弁が、チューブ内から圧力がかかった時、つまり美容液を押し出している間だけ開き、その圧力がなくなると閉じることにより、中に入ってこようとする空気をシャットアウトするメカニズム。このように、HQブライトコンセントレイトには、お客様の安全へのこだわりが商品のすみずみにまで息づいています。

例えば、百貨店の店頭でパウチに入れたサンプルをお客様に渡したとしましょう。それを1回で必ず使い切ってくださいとお願いをしても、お客様によっては1回開けたものを何度も塗ってしまうかもしれません。すると空気に触れている時間が長くなり、いくら製剤上の工夫を凝らしていても、ハイドロキノンの安定性が損なわれることが想定されます。
「HQブライトコンセントレイトを一度使ってみたいというお客様からは、サンプルが欲しいというご要望はもちろんあります。でも、私たちは、利便性以上に安全に使っていただくことが最優先と考えています。ですから、企画担当者とも相談した上で、あえてサンプルは作っていないのです」
「商品が完成するまでに、試作品を100~200個は作りました。商品化の前には必ず自分で使ってみますね。効果や使用感は自分が使用しないことにはわかりませんから」
ロート製薬の大きな強みは、しっかりした研究体制。楯も、細胞レベルでしっかりと効果が確認できた素材を、より角質層深部に届ける製剤に仕上げていくことに情熱を傾けています。そうした環境の中、もっと効果にこだわった製品、例えばハイドロキノンの機能をさらに進化させた商品の開発や、世界的にもニーズの多い、シワに効果的な化粧品も作ってみたい。楯はそんな風に、これからの夢も語りました。

楯 裕美子 2007年入社
ロート製薬株式会社 研究開発本部 製品開発部 製剤開発第2グループ 研究員
大学時代は農学部学部農芸化学科で微生物や酵素などを研究。
入社後、工場の品質管理部門での微生物の検査業務などを経て、外用製剤の研究開発に取り組む。
HQブライトコンセントレイトは、自身の研究成果として初めて発売された商品となった。